今回のブログは大学の授業についてのブログです。これからも毎週多彩な講師の方に来ていただく、大学院特別講義[リフレーミング]の授業を聞いてのメモや、自分の感想などを書いていきます。
第7回目の先生は、インサイトフォース代表の山口義宏さん。
山口義宏|やまぐち・よしひろ
ブランドマーケティング戦略コンサルタント/インサイトフォース代表取締役 1978年東京都生まれ。
ソニー子会社にて戦略コンサルティング事業の事業部長、リンクアンドモチベーションにてブランドコンサルティングのデリバリー統括、デジタル・マーケティング・エージェンシーにてタブレット事業マネジャーを経て、2010年に企業のブランド・マーケティング領域支援に特化した戦略コンサルティング会社「インサイトフォース」設立。
ブランド・マーケティング戦略の策定、商品・デザイン・CI・広告施策の支援、グローバル市場戦略・PDCAプロセスの定着支援を主業務とする。
1. 「ブランドとは」の定義とメカニズム
ブランドは生活者の頭のなかにある「識別記号」と「知覚価値」のこと。
- 識別記号 BrandIdentity
- 文字・音声・形・色・匂い 語感識別
- コカ・コーラのロゴや、ビンのかたち
- 知覚価値 BrandValue
- カテゴリ、人格、ベネフィット、エビデンス等
- 炭酸飲料
- さわやか、刺激的
- ハッピーな気分転換
- 歴史、秘密のレシピ
- カテゴリ、人格、ベネフィット、エビデンス等
ブランドは“一貫性のある体験の蓄積”で作られる
- 生活者の頭のなかの、記号と提供価値の結びつき
- 体験の一貫性によって作られる
- 利益の出る事業基盤となる
- 施策に反映させ整合性を図る核となるもの
スターバックスは一貫性でブランドを作った良い事例
スターバックスは1回しかマス広告に出していないにも関わらず、とても人気のあるカフェです。
それはどうしてなのか? これこそ、「一貫性」の賜物。
コーヒーの豆は、良い物を仕入れればどこの店でも美味しいコーヒーを飲むことが出来ますが、スターバックスは「人のクオリティ」だけは競合と差別化し続けています。
スターバックスに入店すると、「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」と声をかけられます。
山口さんは、スターバックスの担当の方に「そういう教育がされているのか?」と質問したところ、「そうではない」「お客様と個人的な関係を築くようにという教えている」とのお話だったそうです。
「あそこの店舗のあの人は印象が良いから行こう」とか、「いつものあの人」とか、そういった店員さんと消費者の距離を近くするのがスターバックスのビジネス戦略です。
2. ブランド戦略とは
顧客にとっての商品・サービスの価値は、「事実」ではなく「知覚認識」です。
企業目線では、例えば機能・素材・デザイン・製法などのファクト「商品の事実」が商品の価値です。
しかし、顧客目線での価値は「商品への知覚認識」。つまり、機能・素材・デザイン・製法などがいいと認識しているから価値があるということです。
このふたつは似て非なるものです。
ブランド戦略 におけるインサイトとは?
- そこをつくと感情が喚起される生々しい本音
- 感情喚起のアプローチは、チャンス喚起とリスク喚起の2つ
- インサイトは、ブランドの提供価値と一対の関係性
たとえば
AXE
男性の、「努力なく、複数の女性に即効でモテたい」という感情に訴える!シャープ AQUOS
「亀山工場製液晶パネル」を品質エビデンスとして訴求
「世界の亀山ブランド」日本国内生産、匠の技術を訴求富士フィルム アスタリフト
フィルム事業の技術士さん転用のエビデンス訴求
化粧品業界の「新参者」ではなく「研究開発されている」と印象付けられるジャパネットたかた/ソフトバンク
心理的な共感形成に経営者を活用している。
「あの人を言うことだから間違いない」というイメージ。
生活者目線で魅力ある知覚は正しい事実とは限らない
例えば、シャープの「AQUOS」 は 「亀山工場製液晶パネル」を品質エビデンスとして訴求しています。しかし事実としては、パネルの品質は立地ではなく製造設備の世代で決まるし、画質の良さを左右するのは、パネルよりも回路設計技術が重要です。
3. ブランド戦略の進化
iPhoneはなぜ強いのでしょうか?
iPhoneのカタログスペックは、androidの高スペックなものと比べても、決して高いとは言えません。つまりカタログスペックでは説明がつかない。
iPhoneの強さはの本質は顧客体験全体の良さです。
「製品単体の良さ」は価値の構成要素の一要素に過ぎず、全ての顧客体験(検討、購入、開封、設定、使用、共有、修理サポート……まで)の累積がブランドの知覚価値となるのです。
たしかにAppleストアで検討しているときも、初めて開封して立ち上がったときの設定画面も、「わくわく」「じぶんのiPhoneだ!」みたいな感覚がグ~ンと上がって楽しい。
カスタマージャーニーマップのどこにスポットを当てるのかが、ブランド戦略に求められている真価です。
4. 経営視点から見たブランド戦略
経営におけるブランド戦略の位置づけは、社内では事業戦略とマーケティングの4P施策整合させ、顧客にはブランド体験の一貫性を生み出す「核」となるものです。
ブランドの一貫性を担保するアプローチ
カリスマ牽引型
中央集権的な1人のカリスマの暗黙的な嗜好性で一貫性を担保技術牽引型
優位性ある技術がもたらす、他社にはない顧客体験で一貫性を担保戦略牽引型
ブランド戦略スキルを形式知として共有〜育成し、一貫性を担保。日本の企業が弱い傾向があります。
「経営トップが出にくく、技術優位に頼れない環境」では、戦略牽引型で勝ち方を身につけるべき!
今回感じたフレーミング
今日のお話を聞くまで、「事実こそ価値」で、「事実に基づく価値」を謳うことがブランドなのかなと考えていたので、消費者の立場から、「何を訴求すると琴線に触れることが出来るのか」を立場をリフレーミングして考えることが重要ですね。
さらに、その提供する知覚価値をプロジェクトを遂行するメンバー全体でキチンと核として共有すること(大きい会社だと難しいんだろうなあ)も、同時に考えるべきことだと改めて考えます。

- 作者: 川上慎市郎,山口義宏
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2013/03/30
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る
あ、Kindle版もある。